皆さんは、「高齢者住宅」をご存知でしょうか? 高齢者がさまざまな支援を受けながら、自立した生活を送るための住宅です。この高齢者住宅は、入居基準が多様化して、選ぶのが難しいという問題があります。そんな高齢者住宅を探す方に、相談から施設紹介、入居後のフォローまで行う会社を興した浅井さんに、お話を伺います。

高齢者住宅の入居者紹介とは

まず入居希望の方は、どんな時に浅井さんの会社を利用されますか?

「例えば、急な病気で入院して、症状が重く、自宅での生活が難しくなった方がいるとしますよね。療養生活は必要、でも長期間は受け入れてもらえない。そういった方やご家族から弊社に相談をいただき、ご本人が希望する生活や、現在の症状、どのような条件で探されているか等を聞いて、入居施設を探すお手伝いをしています」

最近だとインターネットで老人ホーム等も探せると思うのですが、直接相談に来られるんですか?

「今は施設の数が多くなってきて、入居基準も施設ごとに違います。また、住まいとして実際にそこで生活していくことになるので、内情をよく知る人から詳しく聞きたいというニーズがあります。たとえば、介護を必要とする方もいれば、そうでない方もいらっしゃいますので」

自分自身が困ったことをきっかけに起業

浅井さんは、どのようなきっかけでこのお仕事に就かれたのでしょうか?

「私の叔母が、長期で病院に入院していました。退院期限もあり、早く入居できる施設を探すことになったんです。当時は、父も体調が悪く頼れない状況で、私がいろいろ探しましたが、入居できる施設が見つからず困ってしまいました。最終的には、病院を転々としながら、叔母は亡くなりました。その時に違和感というか、自分が何もできなかったモヤモヤがあって……」

自分自身の原体験がこの業界に関心を持ったきっかけ。転職を決意して、高齢者住宅の入居者仲介の仕事を自身でスタートします。自転車でビラ配りから、入居施設への営業、入居者相談、仲介まで、全ての業務を経験しました。

「元々、独立志向があったので、情報収集をしながら、同時並行で会社を立ち上げました。昔から自分が先頭に立って切り開いていく瞬間が好きなんです」

「とはいえ、最初はあんたどこの誰?ですよね。まずは、入居施設への営業から。朝から晩まで電話をかけて、飛び込みも厭わない。それこそ顔を覚えてもらうために、いろいろなことをやりました。相手は大きな組織なので、関係を創っていくことに時間はかかりました」

時間をかけながら、営業基盤を築くと同時に、入居を希望する方も集めないといけない。そのため、地域を回る介護事業所の担当者とじっくり人間関係を創ってきました。

今はどのようにお仕事を進めていますか?

「昼間は病院や介護事業所を回っていることが多いですね。この仕事は、ケアマネさんから、入居相談をいただくところから始まるので、ケアマネさんとの関係構築、情報共有が基本になります。その後、希望条件を教えてもらいながら、ご本人の条件に合う施設を提案させていただく流れですね。また、入居施設の情報収集、空き室数の確認、入居前の書類準備等、業務はいろいろあります」

取材中も実際にケアマネさんから相談の電話が入ります。丁寧な応対で入居希望者の条件を確認する浅井さん。

家族の様な関係性

一般的に、案件の相談から入居までは、どれくらい時間がかかりますか?生活する場所を探すとなると、結構時間がかかってしまう気がするんですが……

「1件成約するのに平均1か月はかかります。とはいえ、ご本人の状況によって進めるスピードも違うので。私の叔母の時もそうだったんですけど、入居施設を探す時ってご家族もご本人も“初めての状況”ですよね。ご本人の健康状態も日々変わることもありますし、やっぱり“すべてが初めて”という事で、ご家族、ご本人に、正確な情報を伝えていくことが大切ですよね」

 また、この仕事のやりがいは?

「一時的ではあるんですが、ご本人やそのご家族と本当の家族になったような感覚が芽生える時があります。ご家族から、いろいろな悩みを聞いていく中で、人の深い部分に入り込むようなシーンがあるんですよ」

「最近で言うと、“お前の世話にならん!!”と、とても気性の荒い方がいらっしゃったんですけど、最初は警戒されていたのか、まともに会話すらできない状況でした。本当に顔を合わせると怒られるというか……でも、ケアマネさん、ご家族と一緒にどういう施設が良いのかを真剣に考えて、時間をかけて丁寧に情報を伝えていくと、いつも怒っていた人が少しずつ心を開いてくれる瞬間があって……」

施設への入居のため、プライベートな情報に触れる機会も出てきます。時には本人と家族のような親しい関係になることも。だからこそ、浅井さんは入居後のフォロ―こそ大切だと語ります。

「やっぱり、ご本人も今いる病院や自宅を離れて新しい場所で生活するという事は、いろいろな背景がありますよね。病状の急変があったり、当初の希望条件が変わる場合も当然あります。相手が生身の人ですから、簡単にいかないことも多い。でも苦労して入居が決まって、その後、本当に生活が上手くいっているか?って気になりますよね。元気で生活している姿を見ると、この施設を紹介して良かったと思います」

多くの家族とやりとりを進めていく中で、時には、厳しい現実を見ることもあるとか……

「たとえば、年金を受給しても、医療費とそれに付随する費用で、お金がなくて生活ができない方がいるとします。でも住む環境は必要です。病院の退院期限はありますよね。いつまでには、次の住まいを探さなければならない。本人も生活がかかってるんですよ。お金がないし住む場所もない。そういった方にも住環境を提供できるように、さまざまな情報を調べたり、必要な制度を紹介することも僕たちの役目だと思っています」

自分達はどうあるべきか?

京都で事業を立ち上げて3年、一見スムーズに進んできたようにも思えますが、最近、浅井さん自身もこの事業はどうあるべきか?と考える機会があったと言います。

「ある時、ご家族に、無理難題を言われたことがありました。その選択が、ご本人にとって本質的に良い選択なのか。ご本人にとって、明らかに間違っている選択は、丁寧に誠実にその理由を伝えるようにしています。僕たちは、単純に右から左に、人を施設に紹介しているわけじゃないので……新しい場所で生活をするご本人、ご家族の立場に立って、最適な入居先を一緒に探すスタンスでやっています。そうじゃないと絶対にうまくいかないんです」

人と人のつながり

最近は相談の問い合わせも増え、新たにスタッフを募集していきたいとのこと。どんな「チーム」を目指しているのかを聞いてみました。

「一緒に働く従業員も、僕らは同じ家族だと思ってるんですよ。くさいかもしれませんが、僕は一緒にいて、同じ価値観を共有できる人と仕事がやりたいと思っています。今も正直、バタバタする時もあるんですが、皆で力を合わせて協力しながら仕事を進めています」

浅井さんたちの仕事は綺麗なことばかりではない。大変な時もある。だからこそ大切にしたい想いがあります。

「当たり前のことですが、誰かが困っているときに助け合えること。“正直に言いたいことを言いあえる関係”が大切だと考えています。自分自身もそうですが、すべてを一人で出来るわけではないですから。また、僕たちは、医療・福祉に携わるケアマネさんや社会福祉士の方から、利用者さんをご紹介いただくことで、成り立っている仕事なんです。いわば、“人と人のつながりの中で生まれるお仕事”なので、相手を思いやることができたり、心のひだが分かる方と一緒に働きたいです」

 取材部から一言

自分自身が困った経験から、業界に飛び込んだ浅井さん。この仕事を楽しく進めるためには「正直さが必要」と仰っていたことがとても印象的でした。「こころ」では、入社前後のミスマッチを減らすため、応募前の職場見学を推奨しています。興味を持った方は、下記からご連絡をお願いします。