プロフィール

名前:狩野 一峰さん

勤務先:東寺西整骨院(京都市南区)
職種:柔道整復師

現在、3年目
京都府出身、洛南高校卒、関西学院大学卒。元リクルート営業マンから、柔道整復師へ

肩こりや腰痛は、昔は中年以上によく見られる症状でしたが、スマホの使用時間が増加するにつれ、年代を問わず「日本人の国民病」といわれるようになってきました。そして、それに伴って整体院や整骨院が乱立し、どこを選べばいいの?という声をよく耳にするようになりました。

京都市南区の整骨院で働く狩野さんは、元・リクルートの営業マンという異色の経歴を持つ柔道整復師。そこに至るまでの人生や現在の働き方を伺います。

※整骨院・接骨院と整形外科、整体院の違い

接骨院:柔道整復師(国家資格)捻挫や打撲に冷罨法、温罨法、マッサージや物理療法等の施術を行う。

整形外科:医師(整形外科医)が骨・関節・筋腱(運動器)・手足の神経(末梢神経)・脊椎脊髄の治療を行う。

整体院:はっきりとした資格はなく、矯正やマッサージを行っているが、専門知識を持たない人が施術を行っている所もある。

子どもの頃から凝り性

戦後、おじいさんが始めた小さな化粧品店を両親が切り盛りし、さらに父親は鍼灸院を開業。親戚も商売人ばかりで、残業で父親が家にいないとか、サラリーマンの家庭がどういうものかイメージできなかったようです。

子供の頃は「化粧品店で、商品が納入されるときにダンボールが大量に発生するので、それを包丁で切って、ガムテープで貼って家とか車とかを作っていましたね。凝ったものを創りたいというか、遊びなんですけど、いつも時間をかけて没頭していたように記憶しています」

名門校から大手企業へ 3年で退職

大学は、関西の私立大学のトップ4“関関同立”の一角・関西学院大学に現役合格。卒業後、リクルートに就職。 求人誌の営業で、最初は自分が売っている媒体の価値がつかめず、営業成績が全く振るわなかったといいます。具体的に大変だったことはありますか?

「営業は、自分がいいと思ったものでないと売れないのに、最初は、自分の売っている商品の価値がわかりませんでした。求人誌に求人を載せても、効果があるかどうか、掲載になるまではわからない。そんな中での目標を追いかける日々の繰り返し」・・・夜中まで、原稿を考えながら、上司からコンコンと指導いただく日々、あの頃は、本当にしんどかったです。

同期の中でも、中々、結果がない日々、あるお客様と出会ったことで、自分の仕事の必要性が理解できたそうです。

「ある時、雑居ビルで見つけた輸入雑貨の店に営業をかけてみました。家族経営で求人を出したことがなく、給料も安い。それでも、こちらからいろいろ提案して『PRの文章はこっちで考えますから』って必死で考えて自分で書きました。それで掲載になると、20名もの応募があり、今度は不採用の人を決めないといけない。そこで、社長とも深く話せるようになり、手ごたえを感じました」

手ごたえを感じながら、入社2年目には、徐々に売上が上がっていったそうです。しかし、3年でリクルートを退職。名門校から大手企業、人が羨むようなサラリーマン人生を歩んで行けそうだったのに、どうしてでしょう?

「元々、様々な業種を見たいというのが人材業界に入ったのが本音で、リクルートそのものに、強いこだわりはなかったんですよ。3年一区切りというか、3年いればもうベテランという感じで。やりきった感というんでしょうか」

実績を出せるようになると、リクルートは、社員の卒業を推奨する文化があるそうです。そして、柔道整復師を目指して専門学校に入学。家族の反応は?

「家族は、応援してくれました。父親は40歳くらいになってから、鍼灸師の学校へ行って資格を取ったので、20代半ばの僕が専門学校へ行くと言っても、動揺もなかったですね。夜学だったので、昼間は企業の採用支援の仕事をしつつ、夜は新大阪の専門学校まで通っていました」

 そもそも、どうして柔道整復師だったのでしょう?

「自分で何かしたいとずっと思っていたんです。現実的に考えて、飲食業なんかは競合も多いし、元手が結構かかりそうなイメージでしょ。その点、整骨院は、自宅でやっているところでもけっこう繁盛していたりする。自分の父親も鍼灸師をやっていたので、いろいろ話を聞いてその方向に進むことを決めました」 

「もっと直接、人の為になる仕事がしたかったのかもしれません。恥ずかしいですけど・・」

自分の大切にしたいことが出来る環境

東寺西整骨院には、姿勢測定システムがあり、検査技術に加えて、システムで測定し、そのあと患者さんに治療内容を提案するのがこだわりだと言います。

「まずは、正確な検査です。業界的にいろんな事情があって、検査に時間をかけられないところが実はほとんど。でも、身体なんて人それぞれ違うし、子どもの頃に部活をやっていたとか、いわば“身体の履歴書”を提示してもらわないと、最適な施術は提案できません」

「大病院でもMRIやCTスキャンで検査するのは当たり前でしょう。整体や整骨院でレントゲンをとるのは法律上不可能ですが、ほとんどの症状は悪い姿勢からきているので、『なぜその姿勢になるのか?』を調べるのは当然なんですよ」

なぜ、そういう症状が起きるのか?「原因・背景」をしっかり突き詰めるということですね。

「社会人の生活って、仕事をしている時間が大半を占めるので、たとえば一日中パソコンに向かっている仕事とか運転している仕事とか、その職業によって共通する症状があるんです。それは、前職でいろいろな職業の人を見てきた経験が役に立っているかもしれません。生活習慣=仕事なので」

とにかく分かりやすい説明を

「患者さんには、時間がかかっても詳しく説明するようにしています。『あなたの身体のこの部分の血流が悪くてコリがあるのでほぐしますね』で終わりではなくて、『血流が悪くなる原因は姿勢です。仕事中、座っている時間が長いので、ここの筋肉に負担がかかりやすくなっています』みたいな感じですね」

しかし、時には、患者さんの意識の低さに戸惑こともあるのだとか。

「意外にも、患者さんは自分の身体に無頓着というか、自分のことは、後回しになっている人が多いですよね。自分の大切な人が痛がっていたら、もっと早く治療を受けるように言いますよね?でも、ギリギリになるまで行かない。こんなにひどくなる前に、どうしてもっと早く来てくれなかったのか・・・腰や肩が痛いとかは、身体が発している何らかのサインですので、そのサインを無視しないでほしいと思います」

患者さんのサポートを

接骨院というと、年齢層が50代以上~の方が多いと思ってましたが、東寺西整骨院では、20代、30代の方も多く来院されるそうです。最近、ちょうどうれしいお話があったといいます。

「ある時、20代の女性教師が来られました。教師って激務で、休みの日もクラブ活動に消えることが多くて、常に疲労感があるんですよ」

「授業のない時間はほとんど資料作成。ずーっとPCですからそりゃ肩も凝るし、吐き気もするとのことでした。でも仕事をやめるわけにもいかない。ということで、職場環境の改善と、休憩時間にするストレッチを提案したら、肩の痛みも消えて仕事も軌道に乗りました!という報告をもらえたことですね」

新しい働き方

開業時から医院だけでの治療だけでなく、地域活動として、ストレッチ教室や、ヨガ教室も運営しているそうです。また、今年から、企業向けに従業員の健康サポートもスタートされました。個人だけでなく、企業もサポートされてるんですね。

「企業様には、姿勢に関わるセミナーや、ストレッチトレーニングをしています」

「仕事中の姿勢は本当に習慣が大切なので。例えばgoogleやappleなんかはスタンディングデスクを全社員に採用しています。「座ってノートパソコン」がとても姿勢に悪いので、『立って仕事をする』っていうのが、PC作業との姿勢の相性が抜群なんですよ。それぐらい普段の姿勢は大事なんです」

「経営者も社員の健康を考えることは勿論ですが、仕事の効率を上げることを常に考えていますからね」

リクルートと柔道整復師の経験が、MIXされたような新しい働き方ですね。最近は、セミナーも紹介案件が増えてきたと狩野さんが続けます。

「まずはお話を伺って、仕事中の姿勢をまず分析します。その分析を元に『その方にあったストレッチや運動』を提案しますね」

「仕事の合間にストレッチを少しやるだけで、かなり筋肉疲労が緩和されます。一人でストレッチを急にやりだしても変わった人かもしれませんが、セミナーでやったストレッチなら『あ、俺もやっとくわ』みたいな感じで、少し『カラダをリセットする時間』が自然と生まれた企業さんも多いです」

「カラダを動かすとそこに会話も生まれますからね。飲み会もいいですけど、普段のこういうコミュニケーションってすごく大事だと思います。」

体をケアする時間を業務時間に取り入れるんですね。今は、事業が軌道に乗り始めて、仲間を増やしていこうとお考えの狩野さん、どのような方と一緒に働きたいですか?

「一つのことを突き詰めるんではなく、いくつかのことを突き詰めたい方。全然関係ない業界の知識と、柔道整復師のスキルをマッチさせるような人材がいいですね。自分自身もそうですが、『柔道整復師+人材コンサルタント』という一見関係なさそうな経歴から、『企業の健康コンサルティングもできる先生』という治療家になりましたから

なるほど、全く違う分野×柔道整復師のかけ合わせが、「強み」になっていくということですね。最後になりましたが、狩野さんの最終ゴールを教えて下さい。

「人生100年時代。60歳で定年というのは夢の世界で、“生涯現役”からは逃れられない。そうなると、身体が元気じゃないと仕事なんて続かないですよね。パフォーマンスも確実に低下します。最近は人手不足で採用と定着以上に、パフォーマンスの向上が求められています。

「いくら採用・定着がうまくいっても、その人が能力の50%しか発揮できなければ意味がありません。身体が健康であれば100%以上の力を発揮できる方も稀ではないです。仕事を通じて、一人ひとりのパフォーマンス能力を引き出していきたいです」

取材部から一言

狩野さんは、人材業界から医療業界へ転職されました。その経験を経て、「リクルートにいた時と、今自分がやっている仕事の本質は変わっていない」とおっしゃられていたことが、印象に残っています。様々な経験をされてきたからこそ、独自の魅力を持たれているのだと強く感じました。興味を持たれた方は、是非、下記からお問い合わせください。